今週のみやちゅう4

今週は少し文章が長いですがお付き合いください。

高校2年生の「きいちゃん」という女の子と出会いました。きいちゃんは小さい時の高熱が原因で手足が思うように動かなくなり、障害が残りました。4歳の時、親元を離れて施設に入り、それからずっと施設で生活していました。
ある日きいちゃんが元気に職員室に駆け込んできました。私はえがおのきいちゃんを見たことがなかったので「どうしたの?」と聞きました。するときいちゃんは「お姉ちゃんが結婚するの。私も結婚式に出るの。何着ていこうかな」と答えてくれました。
ところが何日かして、泣いているきいちゃんを見つけました。話を聞くと、「お母さんが『結婚式に出ないでほしい』って言うの。私のことが恥ずかしいんだわ。私なんか生まれてこなければよかった」と声を上げて泣くのです。
でもきいちゃんのお母さんが決してそういう方ではないことを知っていました。だから私はきいちゃんに「お姉さんに結婚のお祝いを作ろう」と提案しました。きいちゃんは「着物を縫ってあげたい」と言いました。私は「着物は難しいけど浴衣だったら縫えるかも」と言いました。でも内心、「浴衣を縫うのはきいちゃんには難しいかな」と思っていました。
練習用の布をきいちゃんに渡すと、何度も何度も指を針で刺しました。私が「ごめんね。もうやめよう」と言うと、きいちゃんは「大丈夫。お姉ちゃんへのプレゼントだから頑張る」と言いました。
きいちゃんはそのうち上手に縫えるようになりました。学校でも施設に帰ってからも、ずっと浴衣を縫い続け、結婚式の10日前に縫い上げました。
それを送ると、お姉さんから電話が掛かってきました。「きいちゃんだけでなく、先生も結婚式に出てほしい」と言ってくださいました。
結婚式の当日、きいちゃんはお母さんに買ってもらった新しいワンピースを着ました。とても嬉しそうでした。でも式に参列された人がきいちゃんを見て「どうしてあんな子を連れてきたんかね」と話している声が聞こえてきました。最初は嬉しそうにしていたきいちゃんも、それを聞いてうつむいてしまいました。
しばらくしてお色直しの扉が開くと、そこにはきいちゃんが縫った浴衣を着たお姉さんが立っていました。マイクの前に進んだお姉さんはこう話し始めました。
「この浴衣は、私の大切な妹が縫ってくれました。妹は小さい時の高熱が原因で重い障害を持ちました。そのため親元を離れて生活しなければなりませんでした。両親と暮らしている私のことを恨んでいるんじゃないかとも思ったけど、そんなことは少しも思わなかった。こんな素敵な浴衣を縫ってくれて妹は私の誇りです」
すると、会場から大きな拍手が起こりました。きいちゃんは恥ずかしそうで、そしてとても嬉しそうでした。
式の後、きいちゃんのお母さんがやって来て、涙を流しながら私にこう言われました。「あの子が私に『生まれてきてよかった。お母さん、産んでくれてありがとう』と言ってくれたんです」と。
お母さんはずっと「この子の障害は自分のせいだ」とご自分を責めてきました。でもその時、輝くような笑顔のきいちゃんを見て安心されたのだと思います。
その後きいちゃんは、すごく明るくて自信溢れる女の子になりました。そしてあの時出会った「和裁」を一生の仕事に選びました。

障害のあるなしにかかわらず、何かに向かって一生懸命に取り組むことはその人を成長させ、さらに周りの人に感動を与えられるということを改めて認識しました。

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